施工基礎
施工事例 »鏡・デザインガラスを設計・施工するにあたり知っておいていただきたい情報です。
下 地
ガラス壁材の貼り付け工法の場合、下地は耐水ベニヤ、石膏ボード、MDF、フレキシブルボード、コンクリート打ち放し、鋼板、タイル、などが考えられますが、いずれの場合も「平滑」、「乾燥」、「粉じん・油・埃の付着のないこと」が基本条件です。
下地に凹凸のあることを「不陸がある」といいますが、ボード下地で注意すべき不陸は「反り」とつなぎ目部分の「段違い」による不陸です。コンクリートやモルタル、タイルなどは不陸なく仕上げることは難しく、このような下地材に大面積でガラス壁材を施工する場合は、その面にボードで再度下地を構成することを推奨いたします。
現在、壁面下地で最も不陸の少ないものはPB12.5(※1)と考えられています。
壁紙、ビニールクロス、レザー、塗装面、および漆喰や珪藻土などの左官壁には接着剤の接着力が期待できないためガラス壁材は施工できません。
接着剤とミラーマット
ガラス壁材の接着工法は、ミラーマットと呼ばれるクッション性のある両面粘着テープと指定の接着剤を併用します。ミラーマットを使うのは、その厚さ(1mm、2mm、3mm、5mm)内での不陸の吸収と、接着剤が硬化し接着力を発揮するまでの間のガラス材の保持のためです。
現場作業では下地ボードに埃が付着している場合が多いので、ミラーマットの下地への接着性を確実なものにするため、プライマーとして速乾ボンドなど合成ゴム溶剤系の接着剤を使用するのが一般的です。
また、施工後の安全のためにミラーマットと接着材の使用量がガラスメーカーにより決められております。一般的には設計上でこれらの使用量まで指定しませんが、現場管理上で留意すべきです。ガラス壁材による接着材の選定および使用量は、「AGC板ガラス建材総合カタログ<商品編>」の巻末「ガラスの壁材の納まり・施工」をご参照ください。
接着工法で注意すべきこと
●淡色のカラーガラスの場合、下地の色と接着材の色によっては透ける場合があります。一般的には濃いグレー色の下地が望ましいです。また空目地の場合、目地に強いスポットライトが当たると光が裏面に回るなど照明環境も影響します。できれば下地材色、接着剤色、カラーガラス色の組み合わせを事前にチェックします。
●ミラーの場合、接着剤に引っ張られてミラーが撓み、映像が歪むことがあります。ミラーマットや接着材は均等に入れ、貼り付け時に部分的に無理な力を加えないことが必要です。
●浴槽などに使用される、裏面に耐水塗装をされたミラーでは、その面の接着材への接着強度が著しく低下するものがあります。この場合は接着工法によらず、金物で支持します。
接着工法の一般的目地納まり
ガラス壁材、例えば「ラコベル」の素板寸法は、規格寸法で2,438x1,829mmと大型ですが、納まりや施工性などから目地を設けるのが一般的です。目地は地震時などの下地壁面の動きを吸収する機能として必要ですが、目地の割り付けが壁面全体の印象に及ぼす影響も大きいです。また、目地部分のガラス材への加工により、目地の積極的なデザインを意図する場合もあります。下図は目地部分の面取りの基本バリエーションですが、大きな面取り幅はミラーやカラーガラスなど、表面反射の大きい材料には効果的な手法です。
目地幅は3mm以上が推奨され、シールを打つのが一般的です。シール材の色もデザインの一要素でありますが、目地を目立たせたくない場合はカラーガラスの色に近い色、ミラーの場合はクリアー(半透明)かライトグレーが使われるケースが多いです。
接着工法の出隅納まり
出隅部分はガラスの破損しやすいところであるため、通常はコーナー金物を使いますが、シールのみの納まりも行われます。ガラスエッジは工場で磨き加工され、現場で加工できないためガラス寸法は正確に指定しなければなりませんが、一方で現場寸法への対応としての逃げをどこかで考えておく必要があります。また、下地の精度も重要です。接着層(ミラーマット厚)の調整で逃げることもありますが、これはあくまで非常手段と考えてください。
コーナー金物使用の場合も一般的には目地シールを行いますが図は省略。接着工法の基本金物類
[1]コーナー金物
出隅部分の破損防止としてコーナー金物が使われます。木質系、金属系を特注で製作するほか、金属系では既製品の種類も多いです。コーナー金物を特注または選択する場合の留意点は、下地面からガラス仕上がり面までの寸法です。5ミリ厚のガラス材の場合、接着層3mmとして計8mmになります。このため既製コーナー金物は下地からの出が9mmのものが納まりがよいです。
コーナー金物使用の場合も一般的には目地シールを行いますが図は省略。[2]ガラス自重受けの定番金物
ミラーやカラーガラスの壁面接着工法で、ガラスの下辺、上辺を納める定番金物に「片長チャンネル」と呼ばれるものがあります。片方が長いコの字型の金物で、デザイン上はともかく機能的なもので、特に納まり上のこだわりがない場合はこの金物が使われます。ガラス1枚の面積が1平方メートルを超える場合は接着のみに頼らず、ガラスの自重を受けることのできる金物を併用することとされていますが、片長チャンネルは下地が良好ならばこれが可能な構造です。そのほか、巾木部分や床との納まりの例を挙げます。